鹿児島県たばこ耕作組合                 ふるさとの香り 心豊かに 国産たばこ
     たばこ耕作者研修


◇ 令和2年作を顧みて  
 令和2年産葉たばこの生産にあたっては、収量の安定確保と品質の向上により経営安定、産地基盤強化を図るべく、各種事業を企画決定
したが植付けの頃より新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から、各種事業の中止や開始時期の見直しと先行きの見通せないコロナ禍
の状況にありながらも、生産組織の有効利用に努め、安心・安全な葉たばこ生産に向け、地域毎に具体的実施計画を立て取り組んできた。

 <作柄について>
   苗床期は、1、2月の平均気温が高く、日照時間も平年並みの気象条件と適正な苗床管理により概ね健苗が生産された。
   3月に入り、植付け最盛は、気温上昇の影響で対平年1黄、3黄で3日早く、2黄は5日早くなった。
   植付け以降は、適度の降雨と気温上昇により生育が順調に進み、土寄せは、対平年1黄で3日、2黄、3黄が6日早くなった。
  その後、低温および季節風、土壌水分不足の影響により、発雷期にかけて生育はやや緩慢であったが、5月に入り気温上昇と適度の
  降雨で生育が回復し、心止め最盛は対平年1黄、3黄は1日早く、2黄は同日の実施となった。
   作柄は、3品種とも概ね中柄主体、着葉数は平年よりやや少なく、収穫葉数も平年より僅かに少なかった。
   収穫は、収量確保の観点から心止め前の収穫を意識し、対平年1黄が同日、季節風の影響により2黄は3日、3黄が1日遅い開始
  となったが、その後は順調に収穫作業が進められ、中葉の歩留りも良く、豊作が期待された。総かぎ前の6月下旬~7月上旬の収穫
  最盛期に断続的な降雨で、1黄、3黄の一部冠水したほ地も発生し、完全収穫に努めたが、病害の発生拡散、歩留りの低下により目
  標収量を確保することができなかった。

 <品質について>
 〇1黄(Co319)
 中葉系は下位中葉の一部にⅠ型グレーおよびくすみ、モロメ質が見られたが、概ね熟度、組織とも良いものが
生産された。
 合葉は中庸品~熟度不足、葉元モロメおよび若返りの影響による青くすみ、肥料残り等のものが生産され地域
個人間の品質差が大きい結果となった。
 本葉系は地域によって若返りや疫病等の発生で、熟度不足や青くすみ等が見られ、特に本葉の品質低下が著し
く、上葉は中庸品主体のものが生産された。
 出荷規格の点では、虫害や病斑の手入れ不足および水分吸湿によるくすみや乾燥不十分などが見られ、特に水
分変色による品質低下が多かった。

 
〇2黄(沖縄2号)  中葉系は下位中葉に一部塩素グレーが散見されたが、概ね熟度の良いものが生産された。
 合葉は、遅作の影響による熟度不足、葉元モロメ質のものから正常品まで品質差が明確となった。
 本葉系は、遅作の充実不足、早取りの熟度不足から正常作の中熟中庸品~総かぎ中盤以降は、一部熟良。組織
は、普通~やや緻密質のものが生産された。
 出荷規格の点では、特に自宅乾燥取り卸し分の水分吸湿による変色が見られた。

 
〇3黄(BY4号)  中葉系は下位中葉に一部塩素グレーあるも概ね熟度の良いものが生産された。
 合葉は、中熟主体~僅かに熟度不足モロメ質のものがあるが、全体的には組織中庸から一部緻密質のものが生
産された。
 本葉系は、僅かに熟不青くすみ、組織粗め質のものが見られたが、概ね熟度中庸から一部熟良、組織の良いネ
バリのあるものが生産された。
 出荷規格の点では、自宅乾燥取り卸しの水分変色が見られた。

 
 全品種の県平均1kg当代金は1黄が対平年97%、対前年106%、2黄が対平年98%、対前年101%、3黄が対平年102%、
対前年111%。10a当収量は1黄が対平年89%、対前年78%、2黄が対平年94%、対前年97%、3黄が対平年84%、対前年
79%という結果となった。
 本年産は「目標収量の確保および品質の向上」を県組合の重点課題として、根づくりに主眼を置いて取り組んできた。結果として、中柄
主体の作柄であったが、6月中旬から7月上旬の断続的な豪雨の影響により、一部冠水(黄化現象)および梅雨の長期化、日照不足に伴う
色戻り、疫病等の発生拡散による収穫ロス、歩留り低下により目標とする収量、品質の確保が達成できなかった。
 今後においても、基本耕作技術の実践継続はもとより、作柄のみでなく厳しい気象条件に対応するための健全な根づくりを重点に全天候
型のたばこ作りを目指し、1年を通しての適期適作業の確実な実践が必要で、今回の堆肥、土壌分析結果をもとに地域、総代区、共乾組織
など集団での定期的な話し合いを実施し、意識の統一および共有化を図り品質の向上を含めて取り組むことが重要と考える。
 
 
(1)減収・品質低下地域耕作者の分析  
  〇 ほ地条件が悪く(日当たり、風通し)薄肉、モロメ質となった。
〇 完熟良質堆肥の施用不足により上位葉が充実不足となった。
〇 一部地域で肥料の施用量が少なく(散布量のバラツキ)、充実不足となった。
〇 排水対策が不十分で湿害が発生し生育不良、充実不足となった。
〇 ほ地準備(施肥・畦立て)が遅れ、遅作となり熟度、充実不足となった。
〇 土寄せの不徹底により不定根が少なく、本葉系が充実不足となった。
〇 立枯れ病および集中豪雨後の疫病、灰色カビ病等発生による収穫ロスとなった。
〇 集中豪雨時の冠水被害に加え。その後の黄化、枯れ上がりで収穫ロスが発生した。
〇 集中豪雨以降の若返りの影響で青くすみ汚れによる品質低下となった。

(2)生産目標を達成した耕作者の分析 
  〇 条件の良いほ地の早期選定および排水対策等のほ地管理が良かった。
〇 完熟良質堆肥の増施、地力に見合った適正施肥であった。
〇 適正な土壌水分時の畦立てと土寄せの確実な実践により十分な根群状態となった。
〇 初期成育の良い早作型のたばこ作りができた。
〇 生育状態を見据え、時期々の作業が適期に行われた。
〇 下位中葉収穫の適期着手と横かぎの徹底で完全収穫ができた。
〇 総かぎ開始後も合葉の横かぎ収穫を並行して完全収穫ができた。
〇 立枯れ病、疫病、灰色カビ病等の病害対策を徹底し発生が少なかった。

(3)これからのたばこ耕作技術の対応について 
  ①たばこ耕作の基本的考え方
  気象災害を克服し、品質・収量を安定させるためには、早期ほ地準備および良質堆肥の増施を行うとともに、土寄せの確実
 な実施により健全な根群形成を図り、初期生育を良くして品質本来の適正収穫枚数を確保(1・2黄:17~18枚、3黄:
 16~17枚)し早く心止めができる早作型とする。心止め後は、一時的に葉色が濃くなり、次第に退色(肥料切れ)し成熟
 していくのが通常であり、その期間「もてる・縮む・力のあるたばこ」が正常な作柄、正常な成熟といえる。
 このような作柄は、病災害にも強く、計画的完全収穫が可能となり、品質・収量の確保につながる。

②耕作の基本を守ることが所得の向上につながる
  ◎ 条件の良いほ地の選定 … (風通し、日当たり、排水等の良いほ地)
  ◎ 良質完熟堆肥の増施 … (分析結果の活用 ⇒ 10a当たり1,200kg以上)
  ◎ 地力に見合った適正施肥 … (土壌分析結果の活用 ⇒ 3要素のバランス)
  ◎ 適期、健苗の植付け
  ◎ 大高畦栽培、土寄せの徹底による健全な根づくり
  ◎ 適正収穫葉数確保のための適正な被覆管理と防風ネットの早期設置
  ◎ 病害防除対策の徹底
    ・残幹根の早期処理とほ地外搬出または焼却 … (鋤き込みはしない)
    ・重汚染ほ地の回避
    ・夏季から冬季深耕、耕うんによるほ地の保全管理
    ・農薬の適期、適使用による効果的防除
    ・排水対策の早期実施
  ◎ 適正な心止・適期のわき芽抑制剤散布と除去
  ◎ 中葉系の適期、適熟葉の完全収穫と共乾の適期稼働 … (広く、浅くの徹底)
  ◎ 総かぎの適期、適熟葉の完全収穫 … (成熟状態を見極める)
  ◎ 貯蔵管理の適正
    ・取り卸し、貯蔵葉たばこの適正な水分管理
    ・貯蔵害虫発生防止 … (セリコによるモニタリング)


 鹿児島県たばこ耕作組合
〒891-0122 鹿児島県鹿児島市南栄4丁目11番地2 TEL 099-260-1100 FAX 099-260-1313   

Copyright © 2020 鹿児島県たばこ耕作組合 All Rights Reserved