諺・言い伝え
鹿児島県の農業に関係のあることわざや古老からの言い伝えは、たばこ作にとっても貴重な教えとなり今で
も生かされている。
                     注意:必ずしもこの通りとなるとは限りません。  
 一般作関連 
〇 土間が湿るときは雨となる

〇 雨七日、晴れ七日、風七日(梅雨期のたとえ)

〇 朝雷(あさかんない)は隣にも行くな
   (朝雷がなるとこは、大雨になるので隣にも行くな)

〇 昼からん雨と四十からん恋はやまん
   (昼から降り始めた雨と40歳からの男女の色恋はやまない)

〇 山が近くに見えるは雨

〇 開聞岳に雲がかかれば雨となる

〇 汽車の音が近くに聞こえるときは雨になる

〇 秋の天気は、女だまかし

〇 星がキラキラ遠くに見えると天気が続く
 

〇 夕焼けならば鎌をとげ
  (夕焼けがしたら明日は晴れるから鎌をといで準備せよ)

〇 栴檀(センダン)の芽が出たら霜はなし

〇 蜂が軒下に巣を作ったら台風が来る。高い場所に作る時は台風が来ない。

〇 蚋(ブユ)が飛べば雨となる。

〇 百舌鳥が鳴けば台風も終わり

〇 雉子(きじ)がしきりに鳴くと地震がくる

〇 神経痛が痛くなれば天気が崩れる

〇 八十八夜の忘れ霜、八十八夜の別れ霜
  (霜の終わるは八十八夜の頃で、もう霜はない)

〇 作に本手なし
  (農業は年によって差が出るもので、本のとおりにはなかなかいかない。自然を相手の農業は難しい)

〇 精農(上農)は草を見ないで草を取る。中農は草を見て草を取る。堕農(下農)は草を見て草を取らない。
  (優秀な農家は計画的に農作業を進めるので草が生えないうちに除草作業をするゆとりがある)
 
たばこ関連 
 〇 二十日、二十日のたばこ作(鹿児島地方のたばこ耕作は、毎月20日を目安に主な作業をすれば、よいたばこが
   できる)
   即ち 1月20日 種まき  2月20日 植え替え  3月20日 本ぽ移植  4月20日 土寄せ
      5月20日 心止   6月20日 中葉収穫  7月20日 総かぎ終了

〇 工面7分に段取り3分(工夫と心構えが大切である)

〇 たばこは最早肥(もへこえ)が一番よく効く
  (たばこ作りは、早め早めの作業が大切である)

〇 たばことりは夏祭りまでにはすませ
  (南薩地方では、葉たばこの収穫を竹田神社(加世田)の夏祭り(7月23日)までには終了するようなたばこ
   耕作法がよい)

〇 迫作(さこつくい)より原作(はるつくれ)
  (迫々(段々畑のくぼみの日当たりの悪い畑より、日光、風通しのよい畑に耕作するほうがよい)

〇 苗半作(たばこ作りの基本は苗づくりで、良苗の生産は重要である)

〇 苗床肥土に混ぜる「くん炭」が新しいと発芽が悪い

〇 苗床の踏み込みの際に雪が入ったら温度が上がらない

〇 苗床の周囲に杉の葉や灯油をまいておくとネズミよけになる

〇 ほとり(苗床周辺)の苗は、早生タバコになるから植えるな

〇 霜害になった畑は、すぐ植え替えるな

〇 補植苗は、大きい鉢で確保しておくと立ち遅れ株にならない

〇 追肥は土寄せ時期までに行なう。それ以降は晩作化につながる

〇 一畦おきに片土寄せし、数日後残った畦を土寄せすると生育停滞なし

〇 一回に多量の土寄せは生育停滞する

〇 収穫時の熟度判定は、夕方が良い。日中は見誤りが多い

〇 成畦時のネリ畦は、たばこの一生をダメにする

〇 遅植えは、肥えを減らせ

〇 溜まる水は、根を腐らせるが、流れる水は生きている

〇 アブラムシは、光る物とネギが嫌い

〇 青光している葉は、必ず褐変する

〇 乾燥の上手下手は、黄変初期の排湿にあり

〇 きれいな上葉は、未熟の証拠

〇 満月時のたばこの収穫は、歩留まりが悪い

〇 ベトベトたばこは未熟なたばこ、さらさらたばこは完熟たばこ

〇 葉元青味は未熟なたばこ、葉先こがれは完熟たばこ

〇 しめり易いは未熟なたばこ、しめりにくいは完熟たばこ

                  鹿児島たばこ戦後史
                「耕作技術のあゆみ」より

                  著者  中 村 重 義
              (元鹿児島県たばこ耕作組合販売技術部長)